1995年8月23日(水) 朝日新聞(東京版)夕刊社会面

十年がかりでカルテの電子化を研究してきた大橋院長。 画面を見ながら患者に説明することもある=東京品川区の大橋産科婦人科で


ソフト開発 厚生省実験

厚生省は、患者の診察結果を、パソコンやワープロに打ち込む「電子カルテ」のシステム作りに乗り出すことを決め、9月から運用実験を始める。レントゲンの画像を取り込んだり、画面を見せながら患者に治療の模様を説明できるなどの利点があり、書式などを統一することで、投与される薬品の管理や医療の効率化に役立てたいとしている。

薬二重投与避けX線画像も入力

厚生省によると、カルテを電子化している病院は数十施設ある。コンピュータ好きな 医師や効率化を図っている病院が独自に研究して取り入れている段階で、様式等は 統一されておらず、ソフトの開発も進んでいない。
同省は、患者情報の第一段階であるカルテの電子化により、不効率な病院内の情報化が進むと判断。投薬情報などが統一化されれば、複数の診療科で診療を受ける患者に対する薬の二重投与なども避けられるようになるとみている。 また、カルテの長期保存が可能になるとともに、将来的には、院内の在庫管理や会計システムと併せて院内の無駄を省いていけるとしている。 このため同省では、病名、専門用語や薬のコードを統一し、使いやすいソフトを開発するために、コンピュータ会社などと実用実験を始める。

東京品川区の大橋産科婦人科の大橋克洋院長(53)は、十年前から独自に電子カルテの研究を始め、六年前からほとんどのカルテをパソコンに打ち込んでいる。 診察後、パソコンに向かい、患者の症状や投与する薬を記入する。病名、症状などのほか、体のカラー写真が組み込まれ、治療箇所などが画面で見ることができる。 パソコンは、患者と向き合う机の上にあり、患者の要望によっては画面でカルテを見せる。 症状にあわせ、海外の文献をパソコンで取り出して、患者に説明することもある。院外処方のための処方せんも、パソコンに入力したものをプリントアウトして、薬局に渡している。 大橋院長は、「まだ完全ではないが、記述が詳しく、ていねいになり、患者の情報が増えた。定型文書や紹介状などは便利になった」という。