こどもは元気に遊ぶことこそが大切

大橋克洋 (大橋産科婦人科)

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 大阪「星子幼稚園」の園児は淀川市民マラソンに大人と一緒に5年連続参加、 何人かは制限時間の8時間以内に42kmのフルマラソンをゴールまで走りきるそうです。

 園長の鉄村和夫先生は「ゴールをめざしなさいとは絶対に言わない。 行けるところまで行って、5km ごと飲み物やお菓子のある所で一休みし、 続けて走るのかやめるのか子供に決めさています」とのこと。 子供に 42km の距離感覚はつかめていない。ただ「長い」と感じるくらい。

 どちらかというと退屈なランニングを長い時間つづけられるかどうかが問題だそうで、 走りながら「あの飛行機はどこへ行くんだろう」「あのマンションは何階建て?」 などとおしゃべりしたり、ゆっくり走って適宜に休みをとれば、 大人以上に長い距離を走れるのだそうです。 そのための基礎トレーニングとして、幼稚園では毎日ランニングを欠かさないそうです。

 産科医として感じてきたことは、生まれたばかりの赤ちゃんをふくめ幼い子供達は、 とてもモロイところがあるのは事実ですが、 意外と「強靭」で「したたか」なところもあるものなのです。 草原のなかで産み落とされ、 直ちに肉食動物の攻撃から逃げなければ種族を保存できない状況の中で、 自然と備わってきたものなのでしょう。

 園長先生は「なんでもない場所で転ぶ園児の姿をみて」これを思い立ったそうです。「幼児期に一番大切なのは遊び。人間の基本的な部分はこの時期の遊びで形成されます。園児達はおしなべて忍耐力と協調性があります」とのこと。

 まったく同感ですねえ!! 幼稚園だけでなく、 子供には絶対に身体を存分に使った「遊び」が大切と思います。 ビデオゲームなどは遊びに入りません。 「遊び」とは自分の身体を張ったものでなければ、本当の判断力や応用力、 知恵が発達しません。極論をいえば「子供の頃に座学は不要、どんどん遊ばせること。 座学は自発的にやるようになったらサポートすればよい」と考えています。 十分な「遊び」で身体ができてくれば、根性も知恵も常識も備わってきて、 やる気の座学はどんどん進むはずです。


 数年前、日本のソフトウエア技術者(コンピュータのソフトを作る人)Kさん の講演を聞いて「なるほどねえ、さもありなん、、」と感動したことがあります。 Kさんの作ったソフトウエアは非常に優れたものとして評価され、 米国のスミソニアン博物館に永久保存になっています。 確かにそのソフトは今まで見たこともない素晴らしい発想のもので、 まさに「目からウロコ」なのです。

 講演会の後、部屋でビールを飲みながら直接聞いた話です。 Kさんは山形県(だったかな)の雪深い土地で育ち、 山を越え何キロも歩いて小学校へ通っていたそうです。 ある冬のこと、友達と学校で遊びに夢中になり遅くなってしまいました。 しばしば雪崩が起こり危険なので、 必ず山の向こう側を大回りして帰るよう親からきつく言われていたそうですが、 遅くなってしまったので皆で近道の山裾を通ることにしました。 何か嫌な感じがするなあと思いつつ友達と歩くうち、 突如、雪崩が起こり全員雪に埋まってしまいました。 それでも何とか雪から出た手や足を皆で引っ張りだすことができ、 口をぬぐって家へ帰ったそうです。

 「なるほどねえ、、子供の頃このような命を張った経験をして育ったからこそ、 誰も思いつかないユニークで素晴らしいソフトウエアを作れるんだなあ、、」 とつくづく思いました。「創造性」「応用力」「忍耐力」などは、 子供の頃のこのような経験の中から育まれるものなのだと思います。

 自然界を見ても、野生の動物達は子供の頃から(子供だからこそ) 生命の危険をかけて知恵や勘を発達させます。 「やれ、ナイフを持たせては危ない」、「高いところに登っては危ない」とか、 「体育の授業で怪我をさせて、教師はけしからん」とか、 そんなことでは子供はもっと重大な危険を背負い込むことになります。 「小さな怪我は、大きな怪我を避けるためのもの」と考えるべきでしょう。

 「自分本意のことしか考えられない人達」や「うつ」が増える世の中、 絶対に「日本はスポーツ立国にすべき」と確信しています。 



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2006-08-02 19:35:44 +0900