医療情報交換規約の標準化については、厚生省電子カルテ開発事業において作業が行われたが、その後MML/MERIT-9研究会において継続されて来た。
このような標準化にかかわってきた日米の組織と、そこで提案されている規格については以下のようなものがある。
HL7は米国で使われている医療情報交換のための標準規約で、受診者管理、オーダ、照会、財務、検査報告、マスタファイル、情報管理、予約、受診者紹介、受診者ケア、ラボラトリオートメーション、アプリケーション管理、人事管理などの情報交換を取り扱う。HL7はHealth Level Sevenの略で、「医療情報システム間のISO-OSI第7層アプリケーション層」に由来する。米国のHL7協会本部では数多くの技術委員会を組織し新しい標準の研究・作成を行っており、会員(米国及び国際支部国)の承認後発行される。日本においても大学病院などのシステム化や各種の標準化活動において本標準が採用されている。
HL7協会は、医療情報システム間における情報交換のための、国際的標準規約の作成、普及推進に寄与することを目的とする非営利の任意団体で、1987年に米国で設立された。現在アルゼンチン、インド、英国、オーストラリア、オランダ、カナダ、韓国、スイス、台湾、中国、チェコスロバキア、ドイツ、トルコ、日本、ニュージーランド、フィンランド、ブラジル、南アフリカ、リトアニアの19カ国が国際支部として活動している。
日本における標準化、実装作業において日本固有の仕様を検討しHL7標準に反映させる必要がでてきたため、1998年7月に日本医療情報学会及びJAHISの主要メンバーが発起人となり、第7番目の国際支部として日本HL7協会が設立された。
日本HL7協会の主な活動としては以下のようなものがある。
「電子カルテ研究会」は、この分野の研究・開発を活発に行ってきた組織としてもっとも古い歴史をもつものである。この組織が作られたのは1994年で、この年の医療情報学会で若手の医療情報研究者達が呼びかけを行って、日本医療情報学会の課題研究会として「電子カルテ研究会」という小分科会が作られた。
この研究会は最初 Mailing List で討論を行ってきたが、1995年春に東京品川区で第一回の off line meeting が行われ、ここで「電子カルテはユニークな発想による自由な進化を妨げないよう規制すべきではない。その反面、いろいろな電子カルテ間で医療情報を共有・交換するためには医療情報の交換方式に関し標準規約を設ける必要がある」というコンセプトが確立された。
医療情報交換規約としては、当時普及を始めた Web の記述言語である HTML の元となった SGML を元にすることが決められ、その後 XML ベースへと移行してきた。米国の標準規約 HL7 が XML ベースになったのはごく最近のことであり、このような基盤となるコンセプトの取り込みに関して数年先を走ってきた。
電子カルテ研究会は、宮崎医科大学医療情報学部の吉原博幸教授(現在は京都大学医療情報学部)を中心に、電子カルテとその周辺システムに関する様々な研究や討論を行ってきた。宮崎県のリゾート地シーガイアで毎年5月頃に3日間にわたって開催される泊まり込み合宿「SeaGaia meeting」は、自由な雰囲気で楽しく電子カルテに関する議論をできる場として貢献してきたが、本年で8年目を迎える。
この SeaGaia meeting において医療情報交換規約として MML(Medical Markup Language)が提案され開発されてきた。この研究会が自由な発想で討論・研究を進め、実用的な技術を開発してきた歴史的意義は大きい。
特定非営利活動法人「MedXML コンソーシアム」電子カルテ研究会は 2002 年に発展的解消を行い、同年4月から特定非営利活動法人、いわゆる NPO である MedXML コンソーシアムが設立された。
その目的は、今後活動をさらに本格化するにあたり、行政や国際的な見地から確立された人格を有する必要があること。医療の分野と企業の分野が協力して今後の医療情報システムのインフラとなる基盤として、MML をさらに発展・普及させることである。これは同時に MMLが研究の段階を過ぎ、実装可能な技術として成熟してきたことに伴う体制作りでもある。
MedXML コンソーシアムでは診療録技術専門委員会がMMLの内容と名称を引き継ぎ、産業レベルでの技術として新たに出発することとなった。また、これを機会に国際的視野に立った活動を開始し、中国と連携して中国版の作成なども行われている。
HL7との大きな相違は、HL7協会が米国主導でクローズドな姿勢であるのに対し、MedXML はわが国の国情にあった実務レベルでの開発が行われることと非常に自由でオープンな組織であることである。
MedXML コンソーシアムの主な活動としては以下のようなものがある。
MERIT-9研究会は浜松医科大学の木村教授や東京大学の大江教授を中心にした研究グループである。これまで、既存の各種情報交換規格(HL7、DICOM 、MMLなど)を使い、ユースケースごとにそれらをどのように組み合わせて利用するかについて具体的方法を提示し実装を進めてきた。例えばHL7やDICOMに従って記述された情報を、必要に応じMMLで包むという使い方を提案してきた。
しかし、検討を経るにしたがいHL7やDICOMを包む規格としてMMLだけでは不十分であるという結論になった。例えば、外注検査の検査会社からの報告の場合には、宛先、送り元など、これが外注検査報告であることを示す標識などが必要である。MMLスタンスは特定の利用場面別にDTD を設定するものではないので、MMLを変更するより新たな言語を策定するほうがよいと考えられた。
そこで今後はMERIT-9独自のラッパー言語を策定し、その提示と実装をすすめていくことになった。その言語はXML 規格に完全に準拠したものとし、ユースケースごとに異なるDTDを定義する。
HELICS は Health Information and Communication Standards Board の略称で、「保健医療福祉情報システムで扱う情報を電子的に交換する方法、コードを含む記述・保存形式などについての標準化を行う団体」間で、一貫性ある活動を実現するために標準化の方針などについて協議を行う。同時に利用目的ごとの標準規格を推奨し、指針を示すことを目的とする。
ここには、前述の日本HL7協会、MedXMLコンソーシアムなども所属している。